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レオシュ・ヤナーチェク モラヴィア音楽の特徴とヤナーチェク





現在のチェコは大きく分けて、スメタナやドヴォルザークの生まれたボヘミア(西部)とヤナーチェクの生まれたモラヴィア(東部)という歴史的地域から成り立っているが、両者はその文化、民俗音楽にも違いがある。ヤナーチェクの音楽においては、モラヴィア音楽の特徴がまず挙げられる。
モラヴィアの音楽は、ボヘミアの音楽が強拍で始まる1、2小節あるいはその組み合わせからなるリズムパターンを反復する舞踏的な構成であるのに対し、基本的にはリズムの反復構造を持たず言葉の抑揚に任せ朗唱風になだらかなリズム、メロディで推移してゆくもので、イスラム教徒によるコーランの朗唱や、東洋の民族音楽に多くみられるメリスマ唱法を連想させる特性を持っている。
ヤナーチェクは、こうした特徴にはモラヴィア地方の方言が関与していると推測した。モラヴィアの言葉はアクセントがマイルドになるという特徴があり、ヤナーチェク自身、自分の名前の「ナ」のアクセントをうまく発音できず、長音が詰まってしまって「ヤナチェク」と発音していたと言われるが、彼はこの特徴を音楽の特徴と結びつけて考え、モラヴィアの民謡の旋律は「話し言葉の抑揚から生まれた」との結論に達した。彼は、これを「発話旋律」あるいは「旋律曲線」と呼んでいる。このアイディアは真に現代音楽への道を開くものであり、スティーブ・ライヒのオペラやクリストフ・デルツの「トランスコンポジション」と呼ばれる作曲技法に影響を与えた。
こうした考えを抱いたヤナーチェクは、人の話した言葉や動物の鳴き声などあらゆるものを採譜しメモしていった(娘オルガが臨終の床でついたため息までも採譜されている)。ヤナーチェクのオペラで今日比較的上演回数の多い「イェヌーファ」「カーチャ・カヴァノヴァー」「利口な女狐の物語」「マクロプロス事件」「死者の家から」のいずれもが台本を作曲者自身が書き上げている。
また、モラヴィア民謡では旋律を三度や六度で重ねることがある。ヤナーチェクは部分的にこの手法を用いることで効果を上げている。これはボヘミア民謡にも共通の特徴であり、ヤナーチェクに先行するスメタナやドヴォルザークもしばしば用いているものである。



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